LIBER AL vel LEGIS

HierosPhoenix2007-02-16

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

"わが預言者に従え! わが知識の試練を最後までやり抜くのだ! われのみを求めよ! さればわが愛の喜びは、汝らを一切の苦痛より救い出すであろう。まさしくその通り。われは、わが肉体の奥底を賭けてそれを誓う。わが神聖なる心臓と舌を賭けて、われが与え得るすべてのものに賭けて、われが汝ら全てに欲する一切のものに賭けて"
  Sr. Raven訳 『法の書』第1章32節

1904年4月8日正午前、エジプトのカイロ。

期待と不安に満ちた28歳の若き野心家アレイスター・クロウリー。詩人、登山家、魔術師。ローズ・ケリーとの蜜月旅行の途上での出来事です。その前日、愛妻ローズがトランス状態に陥り、明日からの三日間、筆記用具を準備して正午からの一時間に伝授されるであろう預言を書きとめよ、との謎に満ちた指令が伝えられていました。指令の主はアイワスと名乗る謎の声です。

そして、正午丁度に彼はアイワスの声を聞くことになります。
"Had! Nuitの顕現" "天界の一団がヴェールを上げる"

クロウリーによれば、『法の書』を伝えたアイワスの声は、彼の左肩の向こう、部屋の最も遠い角から聞こえてきたといいます。その声は深い声質で、音楽的で表現豊か。その口調は厳粛にして官能的・・・柔らかく、時に獰猛な声量あるテナーかバリトン。アイワスは物理的な肉体を持たず、インセンスの煙のような繊細な物質から成り、背の高い、30代のがっしりとした男性に見えたそうです。意欲的で力強く、荒々しい王の顔つき。服装はアラブ風ではなく、アッシリアもしくはペルシャのそれであったといいます。まるでその当時のクロウリーの精悍さそのものですね。

古代エジプトの沈黙の神ホール・パー・クラァートの召使と名乗る謎の指導霊アイワス。クロウリーが受け取った『法の書』は100年以上の時を越え、現代に受け継がれています。その教えの中核は、人間の(真の)意志の力が自由へと人を導くこと、新しい時代(ホルスのアイオン)の魔術の術式についての深遠な教義でした。

65枚の紙に筆記された220節のメッセージ。65は主アドナイ(Adonai)、聖守護天使の数字、そして光(L.V.X.)の数字です。また全体が220節からなることから『220の書』(Liber CCXX)とも呼ばれる稀有な魔道書、それが『法の書』です。それはクロウリーが、彼の聖守護天使から受け取った13の霊的指導文書(A級刊行物)の筆頭に位置づけられ、この書の存在は、彼が率いていた魔術団体 東方聖堂騎士団(O.T.O.)の活動の焦点となりました。

『法の書』の中核を成す教えは? それは人の中にこそ神が宿り、人の中にこそ全と自由と宇宙が宿る、という教義です。『法の書』の教義は次の二つの言葉に要約されます。

 「汝の意志することを行え、それぞ法の全てとなろう」 
 「愛こそ法なり、意志の下の愛こそが」

最初の言葉は「やりたい事をなんでも行え」、という放蕩を奨励する言葉ではありません。自己の本質と結びついた真の意志を発見し、神として体現せよ!という高貴なる宣言にして至上命令です。 二つ目の言葉、「愛こそ法なり、意志の下の愛こそが」。これは対立するいかなる相反物をも愛の力によって統合し、超越せよ、という至上命令です。クロウリーが伝えた新時代の魔術の奥義・・・それは彼が残した幅広い著作を総合的に研究し、また彼の研鑽とインスピレーションが生み出した数々の魔術技法・儀式・瞑想の実践から朧げながら見えてくるものなのかも知れません。

"われは汝の心の中で高められ、そして、星々の口づけが汝の身体の上に雨と降り注ぐ"
  Sr. Raven訳 『法の書』第2章62節 

Love is the law, love under will.