Magical Motto

HierosPhoenix2008-08-09

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

 現実社会に生きる私たちに識別のための固有の名前があるように、魔術師もそれぞれ固有の名前を持っています。社会識別の為の名前と魔法名の最大の違いは、前者は他者が命名したものであるのに対して、後者は自分自身が選択しなければならないということです。

 魔法名とは、文字通り魔術師としての、修行者としての固有にして独自の名前です。全ての魔術師は実践魔術の径に踏み込むと同時に、この魔法名について考究しなければなりません。魔法名(マジカル・モットー)とは、あなたの意志の偉大なる表明でもあり、その目的を簡潔に表現したものです。

まずはその一例を列挙してみます。

・マクレガー・マサース Deo Duce Comite Ferro
(ラテン語: 神は我が導き手なり、剣は我が同朋なり)
・チャールズ・スタンンズフェルド・ジョーンズ Achad
(ヘブライ語: 統一)
・フローレンス・ファー Sapientia Sapienti Dono Date
(ラテン語: 叡智は博識たる贈り物として与えられん)
イスラエル・リガルディー Ad Majorem Adonai Gloriam
(ラテン語: 神の偉大なる栄光へ)
・アーサー・エドワード・ウェイト Sacramentum Regis
(ラテン語: 王の秘蹟)
・ウィリアム・ウィン・ウエストコット Sapere Aude
(ラテン語: :賢者たれ)

アレイスター・クロウリーの魔術結社「銀の星」団では、位階を昇進する毎に魔法名を刷新する習わしがありました。位階が上昇すれば、大いなる術に対する魔術師の理解が深まると考えたからです。このルールは当時としては斬新でした。先に挙げたチャールズ・スタンンズフェルド・ジョーンズの魔法名「エイカド」は、彼が「銀の星」団のニオファイト(1=10)に昇進した際に選択したものですが、勿論彼には団内での複数の魔法名がありました。「エイカド」が彼の代名詞になったのは、彼がその魔法名を用いて幾つかの本を執筆・出版したからです。

クロウリー自身の「銀の星」団での魔術名の推移は以下の通りです。

 0=0 ニオファイト: Perdurabo (我、最後まで耐え忍ばん)
 5=6 小達人   : Cristeos Luciftias (光あれ!)
 6=5 大達人   : Ol Sonuf Vaoresaji (我、汝を統べん)
 7=4 被免達人  : OM (否)
 8=3 神殿の首領 : Vi Veri Vniversam Vivus Vici (我、真理の力によりて生あるうちに宇宙を征服せん)
 9=2 メイガス  : To Mega Therion (大いなる獣)
 1=10 イプシシマス  : To Mega Therion (大いなる獣)

黄金の夜明け」団では、初参入者という最初の位階から予備門(ポータル)と呼ばれる達人の直前までの位階を総称して外陣(アウター・オーダー)、小達人から被免達人までの高位階を内陣(インナー・オーダー)として区別しており、外陣と内陣では異なる魔法名を持つことが一般的でした。いずれにしても、魔法名は一度決めたら一生不動ものものでもないのです。そしてラテン語ヘブライ語の辞書などにあたりながら、魔法名を完成させる行為自体が、魔術師をLOGOSの発動へと導く魔術的行為に他なりません。ラテン語ギリシャ語の格言集などをネットで検索して、心の琴線に触れるフレーズをチョイスしてもかまいません。 まずは行動あるのみです。

法名は魔術師の魔術的人格の総称となり、やがては魔術師のマジカルライフ全般を表象する神聖な名前になります。いずれは、その名前を儀式の際に宣言し、また魔法武器の上に書き記すことにもなります。

私の魔法名 Hieros Phoenixは、OTOでの私の活動の焦点となっています。Phoenixクロウリーの有名な「フェニックスのミサ」からも連想されるように、絶え間ない生命の復活と太陽とのリンクを示唆しています。このミサは生命の乗り物である血、より正確にはプラーナ、錬金術の水銀の昇華を通じた自己再生と強化を表しています。クロウリーは、その象徴体系をフリー・メーソンリーのペリカンの象徴から拝借したことは明らかですが、不死鳥はより魔術的です(ケネス・グラントが『魔術の復活』で解説している「吸血のミサ」という解釈は明らかに誤解を招くものです)。

私はHieros Phoenixの他に、明確に四つの魔法名を使用していましたし、現在もその内の幾つかを併用しています(かつてペンネームとして使用していたFrater Ishtadevaというのは、本当に単なるペンネームです)。もし、大いなる術に対する理解が深まれば、また新たな魔法名を自らの意志に則って選択するつもりです。

Love is the law, love under will.