Ordo Templi Orientis

HierosPhoenix2009-04-29

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

 この個人的な日記(たまにしか更新しないので日記と呼ぶには相応しくないかもしれませんが)は、殆ど役に立っていないと思いますが、ここ数年コンスタントにOTOに関心を抱く方々、志願者の方々からコンタクトをいただきます。メールでのやりとりで、OTOが志願者にとって、参加するに値する団であるか否かが基本的には判断できます。実践魔術の修行コース(コレスポンデンス)や師匠と弟子のマンツーマン指導などを求める志願者には、他の教育専門の団体の門戸を叩いていただくようお願いすることもありますが、多くの場合、OTOに関する予備知識をあまり持たないままコンタクトしてくる方々が多いと感じています。ここで、少しOTOに関して整理してみたいと思います。

 OTOに於ける秘教探求の「核」は一連の秘儀参入儀式にあります。儀式で取り上げられる寓意や象徴群は、やがて志願者に秘教的な知識、またその実体験がもたらす「理解」と「衝撃」を齎し、志願者の探究心を大いに鼓舞します。連続した秘儀参入(勿論、数年に渡る作業です)による自己変容のプロセスは単に受動的なものではなく、それらの儀式が内包する啓示の種子が志願者のプシュケーの中で発芽し、成長するといった能動的な要素を孕んでいます。

 OTOの秘儀参入は、厳密な免許資格を要する秘儀伝授者によるテンプルでの儀式執行によってのみ授与可能です。秘儀参入者の構成は位階によって分割、定義されており、団には合計21の参入位階があります(13の番号が付与された主位階と8つの番号が付与されていない中間位階、または副位階を含んでいます)。またOTOの位階は、「法の書」に登場する「隠者」、「恋人」と「大地の男」という、三つの「三つ組」と呼ばれる階級に大きく分けられています。通常、第0位階から第三位階までの参入儀式はOTOのオアシスで、第四位階以上についてはOTOのロッジで挙行されます。ただし、第四位階の参入儀式の執行にはOTOの高位階メンバーの参画が必要とされるため、第0〜第三位階までの参入儀礼が日本で定期的に実施されています。第四位階とP∴I∴については、連続して授かることが可能で、海外から高位階参入者を招いて実施するか、志願者が海外のロッジを訪問するかのいずれかの方法がとられています。

OTOの位階構造
★三番目の「大地の男」の三つ組み(The Third, or Man of Earth, Triad)

0° 位階  ミネルヴァル
 Minerval
I° 位階  男にして兄弟、女にして姉妹      
 Man and Brother Woman and Sister
II° 位階  魔術師
 Magician
III° 位階  親方魔術師
 Master Magician
IV°位階  完全なる魔術師 そして エノクのロイヤル・アーチの同胞
Perfect Magician and companion of the Holy Royal Arch of Enoch
P.I. 完全なる参入者 または エルサレムの王子
Perfect Initiate, or Prince of Jerusalem


★全ての三つ組みに属さない位階 (Outside all Triads)
東と西の騎士
Knight of the East and West


★二番目の「恋人」の三つ組み(The Second, or Lover, Triad)
V°位階 薔薇十字元首, そしてペリカンと鷲の騎士
Sovereign Prince Rose-Croix, and Knight of the Pelican and Eagle
  赤鷲の騎士, そしてヘルメス哲学者騎士の上院議会員
Knight of the Red Eagle, and Member of the Senate of Knight Hermetic Philosophers

VI°位階 カドッシュ団の卓越した(聖堂)騎士 そして聖杯の同胞

Illustrious Knight (Templar) of the Order of Kadosch, and Companion of the Holy Graal
検察審問官 そして大法廷の成員
Grand Inquisitor Commander, and Member of the Grand Tribunal
  ロイヤル・シークレットの王子
Prince of the Royal Secret
VII°位階 セオレティカス そして大いに卓越した神聖大総監
Theoreticus, and Very Illustrious Sovereign Grand Inspector General
   光のメイガス そしてグノーシスカトリック教会司教
Magus of Light, and Bishop of Ecclesia Gnostica Catholica
   光のグランド・マスター そして諸儀礼と位階の監察官
Grandmaster of Light, and Inspector of Rites and Degrees


★一番目の「隠者」の三つ組み(The First, or Hermit, Triad)


VIII°位階 イルミナティの完全教皇
Perfect Pontiff of the Illuminati
    イルミナティの予言者
Epopt of the Illuminati
IX° 位階  グノーシスの聖域の参入者
Initiate of the Sanctuary of the Gnosis
X° 位階  至高聖王
Rex Summus Sanctissimus
XI° 位階  第11位階の参入者
Initiate of the Eleventh Degree
XII°位階  頂点たる兄弟 そして 団の外なる首領
Frater Superior, and Outer Head of the Order


 ここでは、「大地の男」と呼ばれる最初の6種の儀式について言及します。「大地の男」は全世界のOTOメンバーの9割程度、即ち殆どのメンバーが所属している位階です。「大地の男」の一連の位階は、チャクラの象徴形態とクンダリーニ・ヨガの各段階に基づいた様式に添っています。ヨガの基本的な7つのチャクラが6つの位階に対応しており、それぞれの位階に秘密のサインが存在します。「大地の男」の一連の儀式は、連続した劇的儀礼を構成しています。「第0位階」では、彷徨う神である自我が、「太陽系」に魅き付けられることから始まります。抽象的な表現ではありますが、ここでは確たる意志を確かめられ、宣言されるべく志願者は何者かに捕らえられると考えて下さい。「第一位階」では、志願者たる子供が「誕生」を体験し、「第二位階」では、男あるいは女としての「人生」を体験します(多分に魔術的な寓意によって)。「第三位階」では、個人の「死」を、そして「第四位階」は死後の世界と参入者の栄誉を体験します。「完全なる参入者」の位階では、参入者が象徴的に「極致」を達成し、周期全体が「無」に引き戻されるのです。ここではクロウリーが新しいアイオンの為に確立したN.O.X.の術式による死の超越がテーマとして取り上げられることになります。またOTO では、参入儀礼の効果を完熟させるために、通常一定の時間が必要なので、「第四位階」と「完全なる参入者位階」への進歩には、おおよそ数年かかります。

 これらの一連の劇的儀礼の内、「第二位階」以外のものは、全て単一の重大な体験を表現しています。 とはいえ、多様性に充ちた人生に関連する参入者達の叡智を、例えほんの概略だけでも、単一の儀式(第二位階)で描写することはまず不可能なので、「完全なる参入者」より上の全位階は「第二位階」の詳述、生き方についての過程的な指導になります。つまり、セレマの法に従って生きる術を寓意により体験し、学ぶことになるのです。従って、「第五位階」から「第九位階」までの儀式や教えは、参入者への「人生の熟練」の指導と定義されています。そこにはヘルメス哲学やカバラ、西洋魔術、ヨガなどの指導があり、これらの全ては志願者を、OTOの最高諸位階の性魔術技法に向けて準備を整えさせるためのものとなります。

 OTOの参加資格は、「成年に達し、自由で風評良き男女」であることです。とはいえ、儀式を受ける為には、事前に面接があり、団員2名の推薦が必要です。
「大地の男」の位階の上には「恋人」の位階(第五位階から第七位階)、さらにその上に「隠者」の位階(第八から第十位階、団の最高責任者 O.H.O.)があり、全体としてのOTOの位階制度を構成しています。とはいえ、OTOの上位の位階については、その詳細は覆い隠されています。「大地の男」以上の位階は全て招待により召集されます。しかし、熱意ある魔術師は「東西の騎士」の位階に招かれ、セレマの法を自らの王国の内に打ち立てることによって「恋人」の位階に招集されることになるでしょう。OTOのようなヒエラルキー体質は決して我々の「自由な意志」を阻害するものでありません。このような疑念に明確な回答を得るためには、OTOが提供する自由に関する哲学をよく学ぶ必要があります。

 OTOに対するよくある誤解は、凡そ以下に大別できます。

1. OTOは参入者に性魔術を教示し、また広くこれを奨励する
2. OTOはクロウリーのMagickを教示し、その基礎から応用までを指南する
3. OTOは秘密結社であり、その活動は秘されている
4. OTOの首領は英国のケネス・グラントであり、タイフォニアンOTOとも呼ばれる
5. OTOはクロウリーがそうであったように麻薬を魔術に応用することに関心がある

1.については一番厄介な誤解です。OTOでは第七位階から第九位階の三位階で性魔術を指導していることは事実です。しかし、ワールドワイドでみても、それらの高位階者は、OTO全体のほんの数パーセントに過ぎず、それをもってOTO = 性魔術結社と看做すことは間違いです。

2.クロウリーの魔術テキストの大部分は公開されており、彼は実践魔術の教育団体として「銀の星」団を設立しました。OTOでは、実践魔術学習のためのコレスポンデンス・コース、実践のための通過試験、魔法日記の提出義務などは存在しません。

3.OTOの参入儀式は、勿論秘密にされています。かつてフランシス・キングの手によって、それらの儀式が公開されたことはありますが、重要なパスワードなどは記されていませんし、極めて不親切な形でしか公開されていません。とはいえ、OTOは、OTOに関心を寄せる全ての人々に対してオープンであり、コンタクト先の住所やe-mailを公開しています。個人情報重視であるため、メンバーの素性は勿論秘密ですが、団そのものはオープン路線です。

4.OTOの首領は兄弟ハイメナエウス・ベータとして知られ、クロウリーの著作の編集者、OTOの指導的魔術師として世界中に知られています。ケネス・グラントは晩年のクロウリーの秘書であったことは確かであり、また翻訳もありますが、我々のOTOのメンバーではありません。英国ではOTOのトレード・マーク、OTOの名称の使用が我々のOTO以外には認められなくなったため、タイフォニアンOTOという名称そのものが消滅しました(OTO FoundationやAlbion OTOなどの英国の類似結社も名称の変更を余儀なくされました)。

5.OTOのロッジで麻薬を取り扱ったことが国際本部に知れれば、即刻除名処分です。

 OTOが極めて誤解を受け易い団体であることは明確ですが、日本では特に情報量が少ないため、様々な誤解が生じています。OTOはセレマの法を広めるための秘教的共同体であり、兄弟愛・姉妹愛を基盤に置いています。世界中に拡大した世界最大のセレマ結社は、差別も偏見もなく、ただ真の自由を追い求める魔術師達の集団なのです。

平和と寛容と真実
この三角形の全ての頂点に敬礼し、
騎士団に敬意を表す。
団に縁ある皆様、ようこそ、そして健やかに!

Love is the law, love under will.