Babalon Working

HierosPhoenix2007-03-11

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

カリフォルニア州ユタ州ネバダ州、アリゾナ州にまたがる広大なモハベ砂漠(Mojave Desert)。総面積35,000平方キロ、映画「バクダット・カフェ」の舞台としてもしられています。南カリフォルニアのこの砂漠の中でBabalonを召喚する一人の精悍な男性がいました。

ジャック・W・パーソンズは1914年パサデナで誕生しました。ロケット・サイエンティスト、月のクレーター(37゜N 171゜N)に名前を冠せられた宇宙開発黎明期の貢献者、そしてカリフォルニアに存在したO.T.O.の有力メンバー、魔術師、詩人、反キリスト、爆死した科学者。彼は1941年に妻ヘレンとともにOTOに参入し、短期の間に魔術の才能を開花させた革命指向の若者でした。妻ヘレンは彼が所属するOTOのロッジ、アガペーNo.2のリーダーにして父親的存在であったウィルフレッド・スミスと暮らすため、パーソンズのもとを去ります。しかし、これには理由がありました。パーソンズはまだ高校生だったヘレンの妹サラ(後のロン・ハバード夫人)に手を出しており、愛人にしてしまっていたのです。後にサラからも去られてしまったパーソンズは愛に苦悩し、愛の本質を知るために魔術に没頭します。

パーソンズは才能と甘いマスクに恵まれた人物でした。彼は1946年の初頭から、聖なる女神ババロンを召喚する魔術作業を開始します。11日間に渡る魔術作業を計画したパーソンズは、その方法論をジョン・ディーのエノキアン魔術と彼が所属していた魔術団体OTOの高位階技法に求めました。最初に風の五芒星を空間に描くと中央に風の元素の象徴を刻みます。四大天使の加護を求め、続いて六芒星を用いた後は、「生まれなき者の儀式」の召喚文を朗々と唱えます。「風」の召喚と「風」の魔法武器である短剣を聖別した後に、彼は三番目のエノクの鍵、エノキアン・コールを唱え始めます。東にある「風」のエノキアン・タブレットから王や長老を召喚した後、予め用意していた護符の上で自らの魔法の杖を用いて性魔術を実践したのです。この儀式の際に彼の書記を務めていたのが、後にサイエントロジーを設立したロン・ハバードです。

この実践は連続して行われ、1日に二回行われることもありました。時に血を用いることもあったようですが、詳細は不明です。「風」の作業に関連してか、1月の12日と13日は強い風が吹き荒れていたそうです。彼の作業の目的は彼の魔術のパートナーを引き寄せるためのものでした。「風」の精霊をエノク魔術によって召喚し、現実には肉体を伴ったシャクティを秘めた女性の出現を祈願していたのです。そんな彼の前に正にババロンの受肉を思わせる魅惑的な女性が現れます。
マージョリー・エリザベス・キャメロン。紅い髪と青い目をしたアイオワ出身の女性で、程なくパーソンズの愛人となったのです。二週間もの間、彼らはベッドを共にしていたといいます。激烈なまでのセレマ主義者であったパーソンズと、情熱的なキャメロン。彼らの交わりはそれ自体が聖なる魔術の儀式であったようです。

キャメロンはニューヨークに戻り、ボーイフレンドと過ごすうちにパーソンズの子供を身篭ったことに気付きます。そんなことも知らないパーソンズは単独でモハベ砂漠に向かい、女神ババロンの召喚魔術に没頭します。そして遂に彼は女神の現出を体感し、摩訶不思議な一冊の書を受けとります。『第49の書』、または『ババロンの書』と呼ばれることもある謎の文書です。1946年2月28日の出来事です。『第49の書』は全77節のうち73節が現存しています。

 "しかり、そは我、ババロン"
 "そしてこは我が書、「法の書」の第四章なり。ヘーは名を完成す。ホルスによって
  我はヌイトより流出する。ラ・ホール・クイトの近親相姦的妹なり"
 "そはババロン、時は、汝ら愚者どもよ"
 "汝らは我を喚ぶ、おお呪われし、最愛の愚者よ"

"へーは名を完成す"、つまり「法の書」の第四章である『第49の書』はテクラグラマトンの最後のヘーに対応し、父(ハディート)、母(ヌイト)、息子(ラ・ホール・クイト)、娘(ババロン)の聖四文字(YHVH)が、この書によって完成するのです。また49という数字はBabalonが照応するヴィーナス、生命の樹でいうところのネツァクの数字7を二乗した数字です。『第49の書』はOTOによって「法の書」の第四章として認められることは決してなかったものの、彼の人気は根強く、私が知る限りでも二冊の伝記と一冊のエッセイ集が発行されています。またインターネットでも『第49の書』を始め、パーソンズの様々なエッセイ、評伝が入手可能です。

モハベ砂漠に光臨した女神ババロン。その真偽はともかく、獣の後継者の第一候補であったジャック・パーソンズが僅か38歳でこの世を去ったのは残念でなりません。

Love is the law, love under will.