Liber A vel Armorum

HierosPhoenix2012-05-01

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

 クロウリーの魔術結社A∴A∴の外陣 (Outer College) に所属するメンバーは、自身の才能を発揮して、それぞれの元素位階の魔法武器を自作することを義務付けられています。これは例えば、クロウリー自身が魔術の基礎を学んだ「黄金の夜明け」団で教示されていた画一的なデザインを否定する発想と云えるものです。「地」の位階に属する魔術師 (Neophyte) は、自らの才能によって宇宙を表象する「図形」を生み出し、それを理解します。「風」の位階に属する魔術師 (Zelator) は、自らの才能によって宇宙を表象する「言葉」を生み出し、それを理解します。「水」の位階の魔術師 (Practicus) は、宇宙を表象する「数字」を、そして「火」の位階の魔術師 (Philosophus)は、宇宙を表象する「行為」をそれぞれ創造し、理解しなければなりません。外陣と内陣の狭間に位置するドミニス・リミニスは、小達人の助力抜きにアエティールの力で燃え続ける「ランプ」を作成し、それを理解しなければならないのです。その為の基本的な指導は、『A またはアルモラムの書』(第412の書)に書き記されています(国書刊行会版の『魔術-理論と実践』では、第312の書という間違った数字が印刷されています)。412は、ヘブル文字の二番目の文字ベスを構成する三つのヘブル文字 ベス(2)、ヨッド(10)、タウ(400)を合計した総数で、ベスが対応するタロットの札「魔術師(Magus)」を示唆しています。そしてアルモウム Armorumはラテン語で武具を意味します。この短い書は、A∴A∴の魔術師が魔法武器を創造する際の指導書になっています。

自ずとA∴A∴の魔術師の魔法武器は、世界に一つしかない宇宙大の、しかしながら極めて個的な武器となり作成されます。またA∴A∴のA級刊行物である『B または魔術師の書』にはこう記されています。
“杖によって彼は創造する。杯によって彼は蓄える。短剣によって彼は破壊する。コインによって彼は贖う。”
Neophyteは、宇宙を象徴する図形をデザインし、「地」の武器であるペンタクルにそれを刻みます。彼の曼荼羅は、既知の宇宙を破壊し、新たな真実としての宇宙を肯定することによって彼を救済することになります。Zelatorは、彼の宇宙の「名前」を発見します。彼の破壊行為は、「風」の特性である分析力によって宇宙を解体する行為です。しかしながら彼の巨大な宇宙は、その解体作業によって真実の姿を現すことになります。彼は、その「言葉」を彼の短剣に刻むことになります。Practicusは、彼の宇宙を表象する「数字」を導き出すことが義務付けられます。クロウリーにとってのそれは418、666あるいは93であったかも知れません。Practicusは、彼の宇宙を真に理解し、真理を受容するために杯にその数字を刻むことになります。Philosophusが創造する「行為」は、彼の魔法武器である杖とともに行われます。ここにおいてPhilosophusは、宇宙を表象する言葉を超越した「行為」によって宇宙を体験し、その創造のエッセンスと同化します。

 さて「門の守護者」であるドミニス・リミニスは如何にして永久のランプを手に入れることになるのでしょうか? 彼が作成したランプに永久の息吹を与えるものは決してこの世のものではないでしょう。ただし、それを知る者は唯一ドミニス・リミニスただ一人です。ドミニス・リミニスの位階を踏破し、「聖守護天使の知識と会話」を達成すべく団の内陣へと旅立つ彼にとっては、然程大きな難問ではないのでしょう。

いずれにしても、大作業(Great Work)は、遠い未来にある神々しく儚い夢ではなく、「今、ここから」始まる何かです。魔術師は言葉を操り、やがて真の創造へと飛翔します。Solve et Coagula。「三角形の中の眼」は、創造のエッセンスであり、言葉はやがて沈黙へと回帰していくことになるでしょう。

Love is the law, love under will.