活動報告とお礼

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.


随分と報告が遅れてしまいましたが、去る10月18日に開催された西洋秘教伝統のシンポジウム 「Instituta Mysterii」は盛況のうちに無事終了することができました。当日は、日本国内で地道な活動を続けてきた4人の魔術師達と、実際に会場まで足を運んでいただいた熱意ある参加者の皆さんとの絶好の交流の場となったと思います。この点に関しては、まずイベントを主催いただいたVision Abiegnusのメンバーの皆さん、無償での講演を快く引き受けていただいた秋端さん、神木さん、Soror Kさんに深く感謝申し上げます。さてこの日の講義に関しては、正にバラエティに富んだものでした。

トップバッターは、不肖Hieros Phoenixが担当しました。前世紀初頭に「黄金の夜明け」団から派生した異端の一派「銀の星」団 A∴A∴は、結社のサロン化を危惧したアレイスター・クロウリーが結成した魔術結社です。そのカリキュラムと昇進テストの過酷さは、知る人ぞ知る峻厳たるものですが、その発達論はJ.ダニエル・ガンサーによって”回帰の大いなる径”と名付けられ、今も尚、現代に生き残っています。A∴A∴の外陣は、Order of the Golden Dawnと呼ばれていますが、その訓練課程は旧来の「黄金の夜明け」団とは完全に一線を画しています。その重要なキーワードは「制御」です。元素位階で克服すべき内なる課題は、A∴A∴の訓練課程の各段階で順次制御されていきます。また人間の能動的能力と受動的宿命は、ある均衡要素によって調和されていく必要があります。今回は、1時間という短い時間でしたが、その概要を説明し、最後には可視化された<銀の星>のイメージ写真をお見せしました。参加された皆様の学習の一助とならんことを切に願っております。続く神木さんの軽快な聖守護天使論は、彼女ならではのユーモアの要素と相俟って、会場にいる全員の好奇心を大いに掻き立てるものでした。彼女自身の天使論は、私が学習課程で得たそれとは趣を異にする要素もありましたが、彼女自身の鮮やかな個的体験から導き出された論考は素晴らしいものでした。この点に於いて、正に彼女は常に魔術を楽しみ、そのエネルギーを熱望へと昇華させることができる生命力溢れる魔術師です。

Soror Kさんは、知る人ぞ知るヘルメス道の地道な実践者です。彼女が参加する魔術結社F.L.O.の外陣作業は、「黄金の夜明け」団の米国での継承者、ポール・フォスター・ケースから引き継がれたものです。タロットと生命の樹の小径の対応から得られる秘教的な魂の進化論は、極めて明快で参加者一同、とても新鮮な衝撃を受けたと思います。最後の講演者である秋端さんの講義は、学術的なバックグラウンドに裏打ちされた緻密かつ実践的な内容でした。ユダヤ密教たるエソテリックなカバラの系譜を紐解き、一見難解なカバラの手法を会場にいる参加者と一体になって体験させるその手法は、日本の魔術師達が大いに見習うべき素晴らしい講演内容でした。また久しぶりに講演の場に立った秋端さんの威風堂々とした講義での振る舞いは、この国に輸入された西洋魔術を一代で世に広めた正にバイオニアとしての威厳に充ちていました。Institute Mysteriiは正に大成功であったと実感しています。講義の後は30人近くの参加者による大宴会でしたが、1990年代のそれを彷彿とさせる楽しくもかけがえのないひとときでした。

10月の31日、ハロウィーンの夜。神木さんと私は、芸術家マンタムさんのお誘いで原宿にあるh. Naotoさんにて挙行されたハロウィーン・パーティーに参加しました。その中の一つの催しで私と神木さんは魔術のコーナーを担当したのですが、これもとても印象深く、また楽しいひとときでした。最初に神木さんにイベントにお誘いいただいた際には、あまりにアウェイな場にかなり躊躇したのは事実ですが、今では貴重な場を与えてくれた神木さんに大感謝しています。ゴシック・ロリータの服装を身に纏った数十人の参加者の皆さんと数々の異形のオブジェに囲まれた異空間での魔術質問コーナーでしたが、皆さん真剣に私たちの話に耳を傾けてくれました。私にとってはとても新鮮な体験でしたし、周囲の皆さんも優しくて知的な方ばかりでした。またこんな機会があればチャレンジしてみたいと思います。

この頃、ついにJ. ダニエル・ガンサーの新刊『天使と深淵』が出版されました。400ページの美しい装丁によるハードカバー、またその内容たるや歴代の全ての魔術書が霞んでしまうかのような大著です。日本では、その本を手に取った人はまだそれ程多くはないと思いますが、A∴A∴の魔術作業に触れた書籍、<大いなる作業>の細部に言及した書籍として、他の追随を許さぬ名著中の名著です。関心のある方は、是非実際に手に取って、その縦横無尽な論考に酔いしれていただきたいと思います。




O.T.O. Japanは、11月の末に初めてとなる英語の機関紙『B.A.L.A.T.A.』を発行しました。編集を担当してくれたのは団での大親友 兄弟M.M.M.です。単身イタリアから日本へやってきた彼は、一年近くO.T.O. Japanの仲間として様々なイベントに参加してくれました。とても熱心で誠意ある兄弟ですが、残念なことに現在は祖国に帰還してしまいました。そしてO.T.O. Japanは、次なるイベント The Path in Eternityの準備を整えている最中です。オーストラリア・グランド・ロッジのグランド・マスター、O.T.O.の第十位階、兄弟Shivaをゲストに迎え、来年の3月28日に連続講義を行います。兄弟Shivaは、先のガンサーの新刊『天使と深淵』に序文を書いていますが、O.T.O.きっての論客、優れた知性と熱意を併せ持つ団の最上級団員です。彼は三年前にも極めて濃厚な講義を2本、この日本の地で行ってくれました。彼の来日は約三年半振りですが、今回も素晴らしい内容の講義を行ってくれることと思います。私も当日は、「社会的科学的啓明主義」と題された魔術講義を行う予定です。この講義は専らO.T.O.に関するものですが、クロウリーのトート・タロットの象徴を用いながら、O.T.O.の根幹となる魔術について話す予定です。残念ながら、このイベントは団からの招待者のみをその参加者としています。一般公募はしませんが、現在O.T.O. Japanと友好関係にある皆さんには招待状をお送りさせていただきますので、楽しみにしていて下さい。

最後に、我々の機関紙『B.A.L.A.T.A.』の表紙と、The Path in Eternityのフライヤーに素晴らしいアートを提供していただいた姉妹KUHAを紹介します。彼女と出会ってから3年程度の年月が経過していますが、彼女が優れた才能を持つアーティストであることを知ったのは、つい最近のことです。O.T.O. Japanの主力アーティストとして貢献著しい彼女ですが、今後も団のアートの先鋭を担う魔術師として増々活躍していただけるものと期待しています。

Love is the law, love under will.