Flash of Awakening

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

西洋の秘教哲学の根底を形成するヘルメス学。それは叡智の霊脈として、現代を生きる我々日本人の魂にとっても決して異質なものではありません。現代の薔薇十字伝統の発展を俯瞰すると、そこには数多ある拡散した霊的伝統を綜合した達人達の存在と、彼らが所属した一つの集団がすぐさま思い浮かびます。西洋の秘教伝統、或いは西洋魔術の伝統は、19世紀末に英国で設立された魔術結社「黄金の夜明け」団によって進化・刷新されました。そして現代魔術体系の根幹を成す基礎は、そこで醸成されました。ヘルメス学の綜合を可能足らしめた叡智の体系は、カバラと呼ばれるユダヤ密教キリスト教化、或いは非民族宗教化によってニュートラルな万物照応フレームワーク・システムとして発展してきました。その中核を成す曼荼羅こそが「生命の樹」とよばれる宇宙原理の図式化です。10のセフィロトと22本の小径によって構築されるこの曼荼羅は、万物を分類し、分析する手法を発展させ、そこに魂の進化を目的とした一連の秘教哲学とイニシエーションを紐付けることに成功しました。一般的に、我々にも馴染み深いタロットは、「黄金の夜明け」団以降、この西洋の曼荼羅生命の樹」と密接に関連したカバラの絵文字として発展してきました。

タロットとは78枚から成り、我々の知る限りにおいてそれは霊的成長を促進し、叡智へと導く象徴図形の一組のセットです。78枚の全てのカードが「生命の樹」に固有の「場」を有し、整然と「樹」と対応しています。タロットが表象する寓意と象徴群は、やがて思考を超えた無意識の奥深い領域を少しずつ刺激していき、後には単なる物質にしか過ぎなかったカードと魔術師の魂との間に無数の通路が形成されるようになります。象徴が一度、魂に投げ込まれると、それに呼応した無意識の領域は活性化され、実在的な心的エネルギーが喚起されます。タロットとは生ける象徴群であり、内在するエネルギーを解放する秘密の鍵であると同時に、混乱した魂に調和と知恵を齎す魔術師の最重要ツールです。

訓練を積んだ魔術師はやがて、タロットの各札には「精霊」が宿ると述べます。「精霊」とはその実、魔術師自身の分身であり、活性化されたアーキタイプなのですが、それらの「精霊」は霊的径のみならず、日常生活のあらゆる局面において魔術師を導き、助けます。魔術師はタロットの鍵に整然と収められた大宇宙と小宇宙の法則と働きを見出します。即ち、その中には小宇宙である彼自身の魂の内容物――克服すべき試練や歓喜への入り口が、全て図示されているのです。従って、ヘルメス学の観点から観たタロットは、単なる占いの道具ではなく、カバラの「生命の樹」と密接に対応した秘教学の百科全書でもあるのです。この体系を徹底的に、そして緻密に構築した魔術師が、ポール・フォスター・ケース( 1884-1954 )です。

彼が設立した魔術結社Builders of the Adytum ( B.O.T.A. )の影響力は米国を中心にヨーロッパ、ニュージーランド、南米など世界各地で重要な位置を占め、高い評価を得ています。現在活躍中の第一線級魔術師の多くが、B.O.T.A.の優れたタロットとカバラのレッスンの恩恵を受けています。かくゆう私も、かつてこのB.O.T.A.のレッスンを学び、タロットが魂の血肉となっていく過程を直接体験しました。B.O.T.A.に参加する2年前、私はある魔術結社に参加し、魔術のトレーニングを進めていました。この結社はB.O.T.A.の教えを継承し、更に儀式魔術と集団儀礼の要素を活性化させた集団で、現在世界各国に支部を有しています。この団体は、Fraternity of the Hidden Light (F.L.O.) と呼ばれる「黄金の夜明け」系結社です。この結社はやがて日本にも進出し、東京で活発な儀式活動が展開されることになりました。かつてF.L.O.の支部で共に活動した友人Soror Kさんからお誘いを頂き、今回「Flash of Awakening」〜西洋魔術と意識の新たなる目覚め〜という連続講義に参加させていただくことになりました。

Flash of Awakening」の目的はカバラやタロット、儀式魔術のことを、まだよく知らない西洋魔術の初心者の皆さんに、その概要と魅力を伝えることです。西洋魔術式の魂の発達と変性について、十分な知識がない方々にも分かり易い内容を心掛け、幅広くオカルト、スピリチュアリズム、ニュー・エイジ思想に興味がある人達も含めて広く門戸を開放する方針のイベントです。事務局からの連絡によると今月末頃から申し込みの受付を開始されるそうなので、続報が届き次第、またこちらにも書かせていただきます。

Love is the law, love under will.