Holy Books of Thelema

HierosPhoenix2007-02-17

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

19世紀末のロンドンに産声を上げた魔術結社「黄金の夜明け」団。そこでの居心地が悪くなったクロウリーは、終に自身で新しい魔術結社を設立する決心をします。1906年、数ヶ月に及ぶ中国大陸横断の遠征から英国に帰還したクロウリーは、「黄金の夜明け」団の達人の一人であるジョージ・セシル・ジョーンズと共に「銀の星」団(アルゲンテウム・アストラム、A∴A∴)を旗揚げします。クロウリーの構想をふんだんに盛り込んだ斬新なスタイル。 数学や化学にも造詣の深かったクロウリーは、「黄金の夜明け」団で学んだカバラや儀式魔術、東洋放浪中に師アーナンダ・メッテア、導師パラナンダらから訓練を受けたヨガをカリキュラムに組み込み、迷信でしかない魔術とは一線を画す科学的啓明主義を標榜するのです。

1909年からは、「銀の星」団の機関誌『春秋分点』の発行が始まります。雑誌というよりも、それは分厚いハード・カバーであり、西洋と東洋の叡智が結実したオカルティストの為の百科全書でもあります。彼は「銀の星」のメンバーに過酷な訓練を課します。修行者は、複雑なカバラ理論や儀式魔術の式次第、ヨガの姿勢や呼吸法、瞑想を学び、厳密な試験が義務付けられていました。

さて、『法の書』を受け取った後もクロウリーは、彼の聖守護天使アイワスから幾つかの書物を授かることになります。1907年のクロウリーの日記によれば、同年10月30日に『第7の書』(Liber Liberi vel Lapidis Lazuli)を一気に記述しています。『法の書』よりも若干長い5,700語の書物をたった二時間半で一気に書き上げるのです。そして『第7の書』を書き記した直後、A∴A∴のプロベイショナーの為の研究書物であり、クロウリーが受け取った書物の中でも、その美しさにおいて際立つ『第65の書』(Liber Cordis Cincti Serpente)の記述が始まります。『第7の書』の場合とは異なり、単独あるいは複数の章毎に日を分けてクロウリーに伝えられています。続いて11月25日には『第66の書』(Liber Stellae Rubeae)を、12月5,6日には『第231の書』(Liber Arcanorum)を、14日には同書の22種のシジルを、また12日から14日の短期間に『第10の書』(Liber Porta Lucis)、『第400の書』(Liber TAU vel Kabbalae Trium Literarum)、『第27の書』(Liber Trigrammaton)を連続して受け取ることになるのです。正に怒涛の霊的攻勢がアイワスからクロウリーに降り注いだことになります。

クロウリーは、これらの書物が決して彼自身の意図によって書かれたものではないと断っています。彼が一種の恍惚状態、正確にはサマディーの最中に、彼を媒体として伝えられた聖守護天使の言葉。クロウリーは筆記者に徹したのです。それらの聖なる書物はA∴A∴のクラスA(A級刊行物)と定められ、A∴A∴の魔術師達の研鑽の対象となったのです。

"『第65の書-蛇を帯し心の書』、熱望ある者と彼の聖守護天使との関係の説明。聖守護天使の知識と会話の達成が外陣の王冠となるがゆえにプロベイショナーに与えられる。同様に、神殿の首領の位階が、次なる休息の場であることからニオファイトには『第7の書』が与えられる。全ての可能な諸位階の高みへと彼を運ぶことからジェレイターには『第220の書』が与えられる。『第27の書』には理論的なカバラの頂点の究極の土台が含まれるが故にプラクティカスに、『第813の書』は最高のカバラの実践の土台であるが故にフィロソファスに与えられる"  
   アレイスター・クロウリー

クロウリーがA∴A∴を設立した直後に、殆どのクラスA文書が伝えられたことには何か意味があるのでしょうか? また彼は『法の書』を始めとするクラスA文書の意味を十全に解明したのでしょうか? 最初の質問の答えはアイワスのみぞ知るというみとになるでしょう。そして第二の質問に対しては「No」という答えが返ってくるはずです。クラスA文書、特に『第220の書-法の書』と『第65の書-蛇を帯し心の書』に対してはクロウリーは詳細な解説を残しています。他方、それ以外の11のクラスA文書に関しては、若干の短い解説が残されているのみです。クロウリーがA∴A∴の魔術師達に課したように、クラスA文書に対する徹底的な研鑽--解明と理解こそが達成の一助となります。まだ何も謎が解かれていない壮大なミステリー、それが獣クロウリーの遺産なのです。

Love is the law, love under will.