社会的科学的啓明主義

汝の意志することを行え、それが法の全てとなろう。


今回は昨年3月に東京で実施されたO.T.O.の講義を公開させていただきます。


社会的科学的啓明主義


様々な調査プロジェクトによって私達の「団」、東方聖堂騎士団の歴史に関する詳細な議論が展開されてきています。特にドイツ語圏、並びに米国滞在時のバフォメットX°の団の立ち上げについては、多くの資料が活用できるようになっています。この数年、様々な研究者が私達の「聖なる団」の設立の謎に挑み、またそこから私達は多くの新事実を知るに至りました。

『第52の書』(『春秋分点』第三巻1号所収) と呼ばれるOTOの声明書は、私達に極めて初歩的な情報しか与えてくれません。『アバの書』付録I所収のOTOの公的指導によれば、その声明書は、団の作業の総計に関する基礎的概要を含んでいると説明されています。しかし、アレイスター・クロウリーのこの最初のOTOの声明書だけでは団の作業は極めて不明瞭なままです。声明書はこう宣言します。
「OTOの目的は、団の最高位の参入者のみによって十全に理解される。しかし、その内実については、こう述べられるであろう。ヘルメス的科学、或いは隠秘学知識、純粋なる光の神聖魔術、神秘的達成の秘密、全ての形態のヨガ、ナーナ・ヨガ、ラジャ・ヨガ、バクタ・ヨガとハタ・ヨガ、そして古代の隠された叡智の全ての学派に関してOTOは教示する、と。」

これらの記述は、OTOに関する作業を理解する上では有用なものに思えます。しかしながら、私達の全てが認識しているように、OTOは所謂 教育団体ではなく、ヨガの全ての形態、実践的儀式魔術、又はカバラの魔術等に対して明確なカリキュラムを定義していません。『第52の書』の記述は、基本的に「東方の聖堂騎士団の古代結社の憲法」と題された文書に依拠しています。この文書は、1906年に現代OTOの二代目の「団の外なる長」である兄弟マーリン・ペレグリヌスX°、テオドール・ルイスによって公布されたものです。テオドール・ルイスは、OTOとは「マギの学舎」ないしは、「ヘルメス的科学の団」であり、より重要だと思えることは、彼が団内に「指導過程」が存在していると述べていることです。このように、団の古い記述により、私達は団の作業が如何なるものであるかについて戸惑いを覚えることもあるでしょう。


< カール・ケルナー X° / テオドール・ルイスX° >

OTOは、私達の霊的父であるカール・ケルナーによって設立されました。彼は、オーストリアの裕福な製紙化学者でした。彼は、メイソン・システムと東洋の神秘主義の真摯な追及者でした。ケルナーは、「メイソン大学」のアイデアに肩入れしており、それはフリー・メイソンリーの様々な高位階システムの集合体によって形成されていました。1895年、ケルナーと「ババリアイルミナティ団」の復古者でもあるテオドール・ルイスは「メイソン大学」の設立の相談を開始します。ケルナーは、新しい組織の名前を「東洋の聖堂騎士団」にすることを決定しました。
それは、「メンフィスとミツライム」の高位階群、「光のヘルメス的同胞団」の薔薇十字秘教学、更に全てのメイソンの象徴体系が並列されているオカルト・インナー・グループと呼ぶに相応しいものでした。「東洋の聖堂騎士団」の設立には多くの秘教結社の影響が注ぎこまれています。主要なものを上げれば、メイソンリーの「古代公認スコテッシュ儀礼」、メイソンリーの「スウェーデンボルグ儀礼」、「マーティニスト」団等です。しかし、私はここに1880年ミュンヘンにてテオドール・ルイスとレオポルド・エンゲルによって復活された「イルミナティ」団の重要性を強調したいと思っています。私達は、ここでこの「イルミナティ」団について基本的な事実を知るべきです。


<アダム・ヴァイスハウプト >

オリジナルの「イルミナティ」団の設立者は、私達の「グノーシスカトリック教会」の聖人の一人でもあるアダム・ヴァイスハウプト(1748-1830年)です。彼はバイエルンのインゴシュタット大学の教会法の教授であり、フリーメイソンでした。アレイスター・クロウリー、バフォメットX°は、彼のことをA∴A∴の「神殿の首領」8=3マジスター・テンプリであると見做していました。それはまた深淵を越えたA∴A∴の「第三団」であるSilver Star団の成員であることを意味します。「グノーシスカトリック教会」の聖人達は、またA∴A∴の第三団「銀の星」の成員でもあります。ここにA∴A∴とOTOの明確な繋がりがあります。二重性。


<イルミナティの諸位階 >

ヴァイスハウプトの「イルミナティ」団のイニシエーション・システムに於ける諸位階は、私達OTOと同様に大きく三分割されています。それらは「養成位階」、「メイソンリー位階」、大密儀と小密儀を含む「密儀位階」として三分割されています。それらの三分割の中には、それぞれまた個別の位階があります。「養成位階」には、<修練者>、<ミネルヴァル>、<小啓明者>の各位階があります。
「メイソン位階」には、<大啓明者>と<教導啓明者>があり、「密儀位階」には、<司祭>または<秘儀参入者>と小密儀を含む<統治者>の位階があり、これに魔術師<メイガス>の位階が続きます。最上級の<王>の位階は大密儀を含んでいます。「イルミナティ」団の位階には、他にも様々なバリエーションが存在していて位階の呼び名も一様ではありません。私達が手に取れる団の歴史書によれば、そのバリエーションの理由が、ヴァイスハウプトの同盟者であったバロン・アドルフ・フランツ・フリードリッヒ・クニッゲ男爵(1752-1796年)にあることが解ります。「イルミナティ」団の位階システムと諸儀礼は、主にこのクニッゲ男爵により創作され、また彼の力によってヨーロッパ全土に拡大していきました。


<王>

ミネルヴァルの位階は「イルミナティ」位階の二番の位階であり、私達はその位階の名称を他の古典的なメイソンリーの諸システムに見出すことはありません。あなたが既に認識しているように、OTOの少なくとも二つの位階の名称が「イルミナティ」団に由来しています。第零位階であるミネルヴァルと、第8位階である<イルミナティの完全なる大司教>、<イルミナティの秘儀参入者>です。私達が書店へと赴けば、私達は簡単に貧相なイルミナティ陰謀論、「ニュー・ワールド・オーダー」に関する本を手に取ることができます。「イルミナティ」は、未だに人々の妄想と恐怖を投影する魔法の鏡です。

ヴァイスハウフトは、社会的平等と自由を強調する急進的思想の持ち主でした。彼は、全ての人々は「王」であると主張していました。彼の敵はローマ・カトリック封建制度と王位・王権・王政であり、しかしながら彼は決して暴力の唱道者ではありませんでした。彼は人々の倫理と道徳の変化と進化による平和的革命を目指していたのです。彼の主張は保守的な人々にとっては危険な政治思想でしかなく、確かに彼は迫害を受けていました。私達は、しかしここにラー・ホール・クイトの方法、人類の為の理想的革命の種子を見出します。マジスター・テンプリであるアダム・ヴァイスハウプトは、全ての人間は「王」であると宣言しました。「全ての男と女は王なり」、しかし、それは私達にとっては、もう余り意味を持たない概念です。


<オズの書>

私達のグランド・マスター、バフォメットX°は『オズの書』を書き表しました。これはOTOの計画の要約であり、道徳的、肉体的、心的観点、そして性の自由と虐殺者からの防衛という観点に於ける人間の権利に関するOTOの新しい声明書でもあります。「人間以外に神はなし」とは私達の宣言であり、「我の中に在りて神ならざるものなし」とは私達の「真なる性質」です。

実際のところ、この講義はOTOの歴史講義ではありません。科学的啓明主義の性質を理解するための講義です。1906年に公布されたテオドール・ルイスの憲法にはセレマのコンセプトは存在していませんでした。団は「ヘルメス的科学」団から、「社会的科学的啓明主義」団へと変化し、アレイスター・クロウリーという一人の傑出した参入者によって、セレマの普遍的同胞団へと進化したのです。


<フラー >

J.F.C.フラーは、クロウリーの高名な弟子であり、A∴A∴の最初のキャンセラリウスでした。彼は、自身の「カバラの秘密の叡智」の中でこう書いています。

「啓明主義とは、光の普遍的科学として定義できるだろう。それは単に霊的な意味合いだけではなく、完全なるミステリーである物理的な性質を含む光でもある。「神」とは「光」なり。光無なき世界が創造され、生命はそこから形式的に変化し、光として活動する。死とは、その暗闇の影である」

科学的啓明主義は、無知と古き信仰、誤解に依拠する信念、そして偏見に満ちた暗き地球の硬直した諸概念を照らすでしょう。社会的科学的啓明主義は、無意識や古きアイオンのあらゆる死せるドグマの領域を照明する力を持っています。


<聖堂騎士団と暗殺団(アサシン)>

ジェームス・ワッシャーマンは、『聖堂騎士団と暗殺団』の序文に於いて、「神秘的秘密結社」をこう定義しています。

「神秘的な秘密結社は、あらゆる時代と文化に存在したイニシエーションと霊的な自由へと献身する。アボリジニ部族民の神話的召喚であるデーヴィッシュの恍惚的旋回も、それらの結社も目的は同じである。グループ・セッティング内に於ける、個々の意識のプログミングされた変容である」


<アバの書>

この議論で、最も重要な点は「団」に於けるあなたの魔術カリキュラムは、あなたの「意志」に基づき、あなた自身で決定しなければならないということです。私達の真なる団の長である兄弟ハイメナエウス・ベータは、『アバの書』所収の付録の中でOTOのカリキュラムについてこう書いています。

「東方聖堂騎士団は、古きアイオンの時代に「セレマの法」を受け入れた最初の結社である。それはアレイスター・クロウリー(バフォメットXI°)によって、再構築され、とりわけセレマの法の公布に於ける宗教的、人道主義的使命を活性化し、聖別した」

「OTOは、A∴A∴と同様な感覚で教え、また参入させるのではない。明確なカリキュラムは未定義で、また殆どの位階において試験されることもない。OTOの真のカリキュラムは、各個人の人生と不可分であり、それぞれの参入者のカリキュラムはそれぞれにユニークである」

OTOは現在の子供のアイオンに於ける「セレマの法」を普及する為の基礎的団体です。さてセレマとは何でしょうか?

セレマとは、文字通り解釈するならば、「ホルスのアイオン」に於けるセレマイト達にとっての魔術的、哲学的、宗教的システムです。それは意志に基づき変化を引き起こす科学にして芸術である魔術の実践的メソッドであり、「セレマの法」と共にある人類の解放の哲学であり、同時に「神は人なり、人は神なり」をモットーとした宗教的システムです。そして私達の宗教的活動体として「グノーシスカトリック教会」があります。OTOは、古きアイオンの中で、最初に「セレマの法」を受け入れた結社であり、それ故にOTOこそはセレマのイニシエート達の結社と定義できます。


<青の春秋分点 >

アレイスター・クロウリーは、『青の春秋分点』の編集者論説で重要な考えを述べています。A∴A∴は、霊的進化の径を提供し、個としての探究者を啓明し、指導します。OTOは、連続するイニシエーションを通じて集団を訓練します。私が、数年前に良き友人でもあり、師でもある兄弟シヴァから、初めて「二重性 Duplexity」の概念を聞かされた時、私は本当にエキサイティングな感覚に包まれました。2010年頃のことでしょうか、私と彼は東京の彼の宿泊先で、A∴A∴とOTOの性質について話し合っていました。無知な私は、OTOはA∴A∴のアウター・オーダーのようなものだと言いました。彼は、勿論、その陳腐な意見に決して賛同しませんでした。考えを重ねた今では、OTOが決して他のいかなる結社のアウター・オーダーでもないことは自明の理となりました。私はA∴A∴とOTOの違いを強調しなければなりません。それらは、完全に独立しているものの、互いのカリキュラムは時に関連し合い交差するということです。さて、私は、OTOの性質に於ける調査と沈思黙考を開始しなければなりません。それは私達の「聖なる団」のエッセンスに関する個人的な意見です。団の秘密を探究する象徴的な魔術の小旅行に出掛けましょう。



<バフォメット>

まず、最初に私達は『第194の書 団の憲法への言及と通達』に於いて、団に於ける「三つの位階」のシステムに関する下記の言及に出会います。

「我らの聖なる団を学ぶべし。しかし、そこには「三つの真なる位階」がある。それは『法の書』に記載されている。<隠者>、<恋人>、<大地の男>の三位階である。」

言うまでもなく、OTOに於けるこれらの「三つの真なる位階」は『法の書』の第一章40節に書かれています。<法の書 第一章40節 >

「われらをセレマイト,Thelemitesと呼ぶ者、彼がその言葉を綿密に調べるならば、間違いを犯すことはないであろう。そこには隠者、愛する者、地上の人間、という三位階があるからである。汝の意志することを行え、それが法の全てとなろう。」

『春秋分点』第一巻7号所収の『法の書』の古い解説において、アレイスター・クロウリーは「法の言葉」であるΘελημαを下記のように分析しています。


<対応1.>

“ Θε, 隠者, 不可視なるヨッド, しかし、啓明する。A.’.A.’.  札9 隠者

λη, 恋人, 稲妻の閃光としての可視なるヴァウ、達人の団、 札6 恋人たち

μα, 大地の男 ペー 雷光の塔、 札16 塔

3つの鍵を足し合わすと 31 = LA Not and AL God.”

これは「セレマ」という語を理解しようとするためのゲマトリアを用いたシンプルな一例です。アレイスター・クロウリーは、セレマという言葉とOTOの「三つの真なる位階」に三枚の大アルカナを対応させました。札9 「隠者」を<隠者>の位階に、札6 「恋人たち」を<恋人>の位階に、札16 「塔」を<大地の男>の位階にそれぞれ対応させました。札の数を合計します。 9 + 6 + 16 = 31。『法の書』の鍵でもあるLA (Not) とAL (God) の数値です。さて<隠者>の位階に「隠者」のカードを、<恋人>の位階に「恋人たち」のカードを配当することは理に適っているように思えます。ただし、「塔」のカードを<大地の男>の位階に配当することは、何だかしっくりこないと思いませんか?

さて同様の試みは、チュニジア滞在時のアレイスター・クロウリーの魔術日記の1923年7月28日の記録に見て取れます。


<対応2.>

アイワズの名は三つの位階を示唆する。

ヨッド = 処女宮= 隠者  札9
ヴァウ = 金牛宮 = 大地の男   札5
ザイン = 双児宮 = 恋人たち 札6

金牛宮は元素の「地」を表します。これは決して悪い選択ではありません。いずれの場合でも「隠者」のカードは<隠者>の位階に、「恋人たち」のカードは<恋人>の位階に配当されています。これらはやはり順当な配置と言えます。私達は、どのようにして<大地の男>の位階に正しい配置を行うことができるのでしょうか?

私は、これまでにもセレマの「聖なる書物」に対する謎解きに従事し、クロウリーの他の神秘的文書にも果敢に挑んできました。私は、そのために長年ヘルメティック・カバラの方法論を使用してきました。クロウリーは、『易しい魔術』の中で、多くの興味深い考えを書き記しています。例えば、『法の書』の著者であるアイワス、又はアイワズは、ギリシャヘブライ、同様にアラブのカバラをも駆使すると述べています。彼はまた「名前とは、力の術式である」と述べ、ゲマトリアを用いて固有の名前を理解することの重要性を示唆しています。それはクロウリーが、魔術師アブ・ウィル・ディズ、妖術師アマラントラ、そして彼自身の聖守護天使であるアイワス等の秘密の首領達の性質を理解する為に用いた常套手段でした。加えるに彼はこう指摘します。「数字とは宇宙構造のネットワークであり、その相関性は私達の理解の表現を形成する」。そして彼の指導はこうです。「君は君自身のカバラを打ち立てよ! 君のカバラは私のカバラではない」

そして、これは私のカバラに基づいて配置したタロット・トランプと「三つの真なる位階」のオリジナルの対応です。


<私の対応 >

隠者   札9 ヨッド = 隠者の位階
恋人たち 札6 ザイン = 恋人の位階
宇宙   札21 タウ  = 大地の男の位階

三つの札の総計は36、スター・サファイヤの数値となります。それは6の二乗であり、Σ36は獣の数字である666となります。更に興味深いことに、それはOTOの数字でもあります(アイン、タウ、アインを全てフル・スペルで加算すると130 + 406 + 130でその総数は666となる)。兄弟シヴァは既に、A∴A∴が222であり、OTOが666の数値を持つことを明らかにしています。ここで沸き起こる疑問は、果たして私の対応に価値があるか否かであり、特にそれによって私達に益するところはあるのか?ということです。私は、私の対応の合理性、この私の象徴の旅と、東方聖堂騎士団の秘密のワークとの間に如何なる関連があるのかについて述べたいと思います。私達は、その為にまずは、三枚のタロットの札の意味を一枚一枚確認していくことから始める必要があります。



<隠者>


この札にはヘブライ文字のヨッドが割り当てられています。その意味は「手」であり、テトラグラマトン(IHVH)の最初の文字であることから、「大いなる父」をも意味します。ヨッドは、「創造の種子」、精子を示唆します。「隠者」の札には処女宮が配当されます。何故ならば、全ての創造されたものは、彼の処女性、孤立、沈黙と完全なる純潔さに由来するからです。「隠者」が手に持つランプの光は太陽の光であり、それは彼の創造性と啓明の力、加えて太陽666のロゴスを表象しています。太陽は、全てのものの根源であり、完全に純粋な力です。私達は『霊視と幻聴』の第5番目のアエティールで、「手」の神秘的な役割を見出します。


<5番目のアエティール >

「然るに、必ず上向きの矢と下向きの矢を峻別せよ。上向きの矢は飛翔の途中で力を失う。上向きの矢は、しっかりとした手によって放たれる。というのもイェソドは、ヨッドのテトラグラマトンであり、ヨッドは手だからである。一方、下向きの矢は、ヨッドの最先端から放たれる。そのヨッドとは「隠者」である。その最先端とは広げることのできない、ハディートの心臓に近い点である。」

「手」は、創造の技芸を示唆します。「隠者」はまた単一、全ての種子、神性の偏在の象徴です。


<恋人たち>



「恋人たち」、又は「兄弟たち」は世界の創造を表象しています。「隠者」の単一の「種子」は、ここで二つの要素に分割されます。それは双子を意味し、「水星」に支配される双児宮によって象徴されています。この札は王と王女、または司祭と女司祭の二者間の王宮の「婚礼」を表しています。この札に対応されるヘブライ文字はザインであり、その意味は「剣」です。これは正に「分割」の為の武器です。

「何故なら、われは愛の為に分裂させられたのだ。結合の機が熟する時の為に。これこそが世界の創造なり。分裂の痛みなど無に等しく、溶解の喜びこそがすべて。」
             『法の書』第一章29-30節   

これこそが世界の創造の秘密なり。「隠者」はこの聖なる婚礼の場面に登場します。分裂された二者の間に立ちはだかる重要な役割として。ロゴスを運ぶ者として。その存在は「グノーシスのミサ」では助祭が担う役割です。<トートの書からの引用 >

「このカードの中央部のフードを被った人の姿は、「隠者」の別の姿である。「隠者」ついては札9で後述する。彼は札1で述べたマーキュリー神の一つの姿である。自身が身をすっかり覆い隠していのるで、あたかも、はっきりと見えたり、分かるところには、物事の根源的道理は存在しないと言っているかのようである。」

「彼は入場者のサインをして立っており、創造の神秘的な力を放射しているかのようである。両腕には巻物があり、それは「言葉」を指し示し、それはまた彼の精髄でありメッセージである。」

「しかし、入場者のサインはまた聖別の祝福のサインであり、従ってこのカードに於ける彼の行動は、「ヘルメス的婚礼」の祝祭を表している」


<恋人たち>

法の言葉はセレマなり。「隠者」は、黒い王と白い王女の間の王宮の婚礼、或いはヘルメス的婚礼を司宰します。彼はヨッドを表す創造の力であり、同時に潜在的繁殖力と力強さでもあります。「隠者」は錬金術の「水銀 マーキュリー」であり、硫黄と塩を結合させる変容のエージェントです。イヴとリリスは、ビナーの二つの局面を表象しています。イヴはアイマなる豊穣の母であり、リリスはアマ、暗く不毛な母です。ここでは「隠者」は水銀の原理を持ちつつ、本来の大いなる父の豊穣性と男根、種子 – 精子、ロゴスを保持します。


<オルフェウスの卵 >

この札に登場するオルフェウスの卵は、男性と女性の術式の下、全ての生命の精髄を象徴します。「隠者」は、ヨッドの「創造」の力によって、この卵を受精させます。ギリシャの神話においてオルフェウスの卵は「宇宙」を内在させていると伝えられていることをご記憶下さい。それは王たる男根と王女たる女陰の婚姻によって創造されます。この卵は札9「隠者」にも登場します。「赤い獅子」「王」「ソル・フィロソフォルム」男根と、「白鷲」「王女」「ルナ・フィロソフォルム」女陰は、「皇帝」と「女帝」の二つの錬金術的染色剤に由来し、それら二つの極性はまた「火」と「水」の元素の要素でもあります。この王宮の婚礼は、彼ら自身による「新しい宇宙の創造」と関連しています。それはまたクリスチャン・ローゼンクロイツの化学の婚礼でもあります。<トートの書からの引用 >

「卵は灰色で黒と白が混じり、生命の樹の三つの至高のセフィロトの協力を意味する。蛇は紫色で、王女の色階では水星にあたる。それは自然の中に姿を現した神の影響である。一方、翼は深紅色に染まっており、その色は (王の色階では) 偉大なる母、ビナーの色である。この象徴は、従って「大作業 The Great Work」の開始に必要な均衡を表す完全なる絵文字である。」

オルフェウスの卵はまたコズミック・エッグであり、新たな宇宙を内在させています。「隠者」とは、ひとつの「種子」であり、それはまた純潔でもあります。「恋人たち」の札では、その単一性が「剣」の力によって二つに分割され、しかしながら王宮の婚礼の祝祭によって、一つの新しい宇宙として創造されます。「分解し、凝固させよSolve et Coagula 」、それはヘルメス的科学の基礎的術式です。



< 宇宙 >

これが「宇宙」です。「創造」の結果です。「宇宙」はオルフェウスの卵から流出した「創造」の最終顕現と完全性の絵文字です。<トートの書からの引用 >

「「愚者」の札が正しく始まりを象徴しているのに対して、このカードでは結果として、高感覚な「大作業」の完成の絵文字が描かれている。」

「「宇宙」が表象するテーマは「大作業」の完成の祝祭である。」

「これこそが「創造された宇宙」であり「大作業 Magnum Opus」の完成の「祝祭」である。無が無の範囲を認識すると全となる。おお、牧神パンの完全なる宇宙。」

「宇宙」にはヘブライ文字のタウが対応し、その意味は「十字」です。札の中の「眼」はホルスの眼であり、「蛇」は札20に描かれたアイオンの主たるヘル・ラ・ハです。土星と「地」の元素が、この札に配当されます。舞踏する女性は、新生した処女「宇宙」であり、また第9のアエティールに登場する美しきババロンの娘です。ここに母 = 娘の秘密があります。ここでは母と娘は、共にテトラグラマトンのヘーであり、この事実は『霊視と幻聴』に詳しく解説されています。札の四隅には4つのケルビムがおり、その配置は新しいアイオンの配置に従い置かれています。もしあなたがその効用を知っているとしたら、彼らは「スフィンクスの諸力」となり得ます。彼らは世界の「グノーシスカトリック教会」に於ける「光」と「生命」と「愛」と「自由」です。「宇宙」はOTOの「大地の男」の全ての位階のサイクルを包含しています。その径は「永久の径」と呼ばれています。



これが「世界の創造」です。「単一」なる「種子」としての「隠者」は、相反するもの同士の「王宮の婚礼」を祝祭します。そして彼らは新生した「宇宙」として結果を生み出します。


<アレフの書 >


アレイスター・クロウリーは『アレフの書』、又は「叡智と愚行の書」の86章に於いて「魔術の完全術式」のことをこう記述しています。

「ここに魔術のあらゆる作業のスケジュールがある。まず、最初に汝は真の「意志」を見出すべし。私は既にそれを汝に教示した。その「蕾」こそは、この「作業」の「目的」なり。」

「続いて、「蕾 – 意志」を「人」として定式化せよ。見出し、またそれを構築すべし。汝の「聖なるカバラ」とその「真理」の絶対確実なる規則によって名前を付けるが良い。」

「第3に、この「人」を浄化し、聖別すべし。彼と彼に抗う他の全てに集中するが良い。この「準備」を汝の日々の生活に於いて継続せよ。準備が整ったならば、それぞれの「誕生」の後、すぐさま新しい「子供」が現れよう。」

「第4に、「ミサ」によって特別、且つ直接に「召喚」すべし。入祭文とともに可視なる「子供」の心像を定式化し、「受肉の権利」を差出したまえ。」

「第5に、聖霊を求める祈りと共に「ミサ」を執り行え。汝の「獅子」と汝の「鷲」の結婚に「黄金の婚礼指輪」を供えよ。」

「第6に、程よくそれが汝に吸収されるまで行うが良い。汝の「意識」すらも打ち負かし、受け入れた「子供」を「聖餐式」により摂取するのだ。そして、それを継続せよ。それが「強さ」と「技能」となるまで繰り返すのだ。汝が、時間の許す限りこれを行えば、その「効果」は累積的なものとなるであろう。」



これがOTOに於ける魔術作業です! 私達の魔術とは「創造」であり、それは神だけの特別な技能でありません。「神は人なり、人は神なり」、これこそが私達の「聖なる団」のモットーです。 あなたの位階が然程高くなくても尻込みする必要はありません。あなたの「意志」に従い、この「創造」の作業を執り行うのです。魔術とは、あなたの「意志」に従い変化を引き起こす「科学」にして「芸術」なのですから。

社会的科学的啓明主義の真実に関する私の象徴の旅は、私達の団の聖なるレイメンを確認することによって終えるのが宜しいかと思います。


OTOのレイメンのデザインは、19世紀末のペラダン卿、又はマーティニスト・オーダーに代表されるフランスのオカルト復興に由来しています。それは明らかにメイソン的な象徴ですが、私達はそれをいかに分析できるでしょうか? 私達は、それをセレマの新しい象徴として理解しても良いのでしょうか? 「三角形の中の眼」は「右眼」であり、一般的に「ラーの眼」と呼ばれています。ラーはエジプトの太陽神です。三角形からは、12本の光条が放射され、黄道十二宮が示唆されます。それは、「創造」の象徴としての「隠者」のランプの光を示唆します。

O.T.O.のレイメンは、「意志の下の愛」という神学と共にある私達の中核的儀式、「グノーシスのミサ」、聖なる婚礼(ヒエロス・ガモス)、または聖餐式の象徴的表現であると云えます。「鳩」は、「隠者」の「種子」たる「父 – ヨッド – 火」を運搬します。そして「鳩」は燃え盛る「聖杯」へと下降していきます。
これは、「人間」へ向かう「外在する自然」の科学的図形です。それは生殖の力と真の「創造」の力をもたらします。「隠者」の「種子」は「鳩」によって運ばれ、王宮の婚礼という神殿で祝祭されるのです。「鳩」は金星の鳥であり、それが示唆するものは恋人たちの「愛」に他なりません。HIRILIUとは、クロウリーによれば、鳩の声であり、「聖霊」の形而上学的恍惚の名です。OTOのレイメンは、正に私達の中核的儀式であり、聖婚を表象する「グノーシス」のミサの象徴的表現であり、「創造の芸術」を表象します。「愛」は「子供」を創造します。この子供は、私達にとってホルスです。

「我が口は、太陽の生命の精髄とならん
我が口は、大地の喜びの精髄とならん。
 我の中に在りて、神ならざるものなし」

これは「神は人なり、人は神なり」の術式であり、私達の団のモットーです。「三角形の中の眼」は、太陽的男根であり「聖杯」は女陰、「鳩」は最も高きもののプネウマであり、聖霊、又は太陽のロゴスの運び手です。もうそうあるならば、新しい「宇宙」は創造されることでしょう。そうあれかし。

「隠者」「恋人」そして「大地の男」。それらは東方聖堂騎士団、社会的科学的啓明団の「三つの真なる位階」です。


<第194の書からの引用 >


「このようにして我々は三つ組みを均衡させ、三を一へと結合させるのだ。このようにして我々は人間の情熱と関心の全ての糸を集め、大いなる芸術とともに巧妙かつ、入念にそれらを調和のタペストリーへと織り込むのである。我々の団は夜の天にある星々においてさえ飾りに見えるかもしれない。虹で着色された織物の中で、我々は全宇宙の栄光を示す---汝、見よ、兄弟たる魔術師よ、汝自身の糸は強く純潔であり、その色彩は本質的に輝きである。今、汝の同胞達の全ての美に溶け込む準備はととのった!」

あなたは神の子として何を創造しますか?


<第15の書からの引用 >

「至高の秘密なる「主」よ、この霊的食物を我らが肉体に恵みたまえ、健康と富と強さと喜びと平和を我らに与えたまえ、そして意志と永遠の幸福である意志の下にある愛を成就させたまえ。」

「三つの真なる位階」である「隠者」「恋人」「大地の男」への私のタロットの照応は団の作業を暗示していると私は考えます。
それら三枚の札の数値の総計は36であり、それは「スター・サファイヤ」の儀式の数値です。またΣ36は666で、これはOTOの数字でもあります。あなたは1913年に出版されたこの儀式をめぐって、テオドール・ルイスとアレイスター・クロウリーの間に交わされた会話の内容についてご存じですか?
あなたは、あなた自身の「創造」の力を知るべきです。「隠者」「恋人たち」「宇宙」の三枚の札は、あなたの創造の象徴的プロセスです。
神は人なり、人は神なり。そうあれかし!


愛は法なり、意志の下の愛は。