Liber ABA

HierosPhoenix2007-02-24

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

クロウリーがメアリー・デステ・スタージス(1871-1931)という名の肉感的でカールした黒髪の女性と出会ったのは、1911年11月11日のことでした。ロンドンのサヴォイ・ホテル、彼女の誕生日を祝うパーティーでの馬鹿騒ぎ、刹那の電撃的邂逅、クロウリーは彼女の魅惑的なオーラに我を忘れます。意気投合した二人はサンモリッツ、モンパルナス等を旅し、スイスのチューリッヒに滞在します。しこたま酒を呑み、快楽を貪った二人はベッドに横たわっています。平穏に包まれたメアリーは俄かに化身し、トランス状態の中で白髭をたくわえた老人と出会います。昏睡しながら、謎の白き同胞との接触を描写し始めるメアリー。興奮状態による幻覚? 激しすぎた快楽のしっぺ返し? クロウリーの脳裏にふと7年前のカイロでの出来事がよぎります。老人は「兄弟Pに本を授けよう」と語りかけてきました。兄弟Pとはクロウリーが魔術結社「黄金の夜明け」団に入団した際に選択した魔法名(Perdurabo)の頭文字であり、メアリーが知る由もない名前でした。老人は、「その本の名は『アバ(ABA)の書』であり、その数値は4である」と語りかけてきました。メアリーは後に「銀の星」団で姉妹ヴィラカムと呼ばれ、「春秋分点」誌の編集まで手掛けることになるものの、この当時魔術に関しては全くの素人でした。

メアリーが接触した老人は、アブルディズ(Abuldiz)と名乗る霊的存在でした。『アバの書』はクロウリー自身が書き記すであろう指導書であり、彼の弟子達に与えられるものであるらしいのです。クロウリーはメアリーを媒介としてアブルディズと交信し、様々なオカルト知識を獲得します。クロウリーがその後書き記した『アバの書』は高等魔術と神秘主義の理論と実践を網羅した最高峰の魔術書として完成します。王道の径ラジャ・ヨガの八段階を西洋人にも分かり易く解説した第一部「神秘主義」。それを受けて第二部「魔術」(基礎理論)では儀式魔術の各種道具を大いなる術との関連から紐解き、更に東洋のヨガの叡智を各武器の象徴を通じて解釈するという大胆な内容になっています。第三部「魔術-理論と実践」は1929年パリにて初版が出版されるのですが、近代魔術の金字塔とも云うべき渾身の作です。第四部「セレマ-法」は更に下った1936年に「春秋分点」第三巻三号「神々の春秋分点」としてO.T.O.から1000部限定で出版されました。 近年、O.T.O.の首領ハイメナエウス・ベータが編纂した『アバ(ABA)の書』は第一部から第四部までを初めて一冊に纏めた800ページを超える重厚なハードカバーです。世界中の魔術師達の学習と糧となり、受け継がれる大著『アバ(ABA)の書』。『法の書』の場合と同様にクロウリーは女性を媒介として高次の霊的存在とコンタクトし、その霊に見護られながら『アバ(ABA)の書』を完成させたのです。

Love is the law, love under will.