The Body of Light

HierosPhoenix2008-11-03

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

"人間の身体内にはサイズと形態が近似したもう一つの身体があり、それはより繊細で錯覚ともいえない物質からできている"

"この身体は様々な著述家により星幽複体(Astral double)、光体(body of light)、火の身体(body of fire)、欲望体(body of desire)、微細身(fine body)、輝ける身体(scin-laeca)など無数の名前でよばれ、自らが帰属する領域の対象、特に星幽界の幻像を知覚するのに元来適している"  『魔術-理論と実践』


星幽体投射(Astral Projection)について、クロウリーは膨大な体験値を持ち、その技法を『Oの書』等で指導しています。魔術師は、法衣を纏った自分自身を強烈に視覚化し、その身体と合一し、星幽界に踏み込むことによって、その固有世界の幻像を得るのです。クロウリーは星幽体(Astral Body)を一般的に光体(body of light)と呼び、その第二の身体の教育を弟子に義務付けていました。彼の魔術結社「銀の星」の「地」の位階 1=10 Neophyteでは、その能力の獲得を必須項目として挙げているほどです。この光体の技法は、これまで日本ではあまり詳細に考察されたことはありませんでした。クロウリーは自著の中で、かなり詳細にそれについて述べていますが、結果的に幾つかの誤解を生じさせるに至っています。

光体は最初のうちは単なる想像的身体、イメージ・ボディー、空想として構築されます。クロウリーマングースの逸話(ジョーク)を引用しながら、光体の秘密について語り始めます(『魔術-理論と実践』18章。同書の各章はタロットの大アルカナに対応していますが、光体の技法は第18番目のAtu 「月」双魚宮と関連付けられています)。ではクロウリーは単なる空想を高等魔術の技法として提示しているのでしょうか? 答えは二つあります。

Yes! 星幽体投射(Astral Projection)とは、実のところ魔術師の空想以上の何ものでもなく、それは魔術師の自我が行う自慰行為でしかない。

No! その真価を問うには、継続的な実践が必要であり、この問題は魔術師に対して「真実とは何か? 知覚の本質とは何か?」を問い、その答えを得ることができる重要な実践である。

光体は最初、確かに想像上の身体以上の何らの意味も持ち得ないのは確かです。しかし、継続してこの実践を行ううちに、その想像の身体の隅々にまでリアルな感覚が行き渡るようになります。人間は、基本的にある対象となる技芸への没入に伴い、自然にこの第二の身体を発達させていく習性があります。優秀なスポーツ選手のイメージ・トレーニング、楽器を操るミュージシャンの脳内の指先とイメージの身体、画家が産み出すデッサン力と対象を脳内で完成させる感覚的身体の存在がそれです。

魔法円の中でアーサナに座した魔術師は実際にこの第二の身体を見ることができますし、実践を重ねる毎にその身体に意識を同調させることが容易になります。この自由な身体は、自分自身の姿形に留まらず、様々な形態をとることが可能です(「神形を纏う技法」は、実際は光体を変形させる技法なのです)。一度、光体の中に入った魔術師は、より微細で百花繚乱とも呼べる星幽界の中で、その五感を働かせることができるようになります。光体はときにドッペルゲンガーとして、魔術師自身に目撃されることがある!といえばそれはあまりにも馬鹿げた事実に思うでしょうか?

クロウリーはこの実践の際に、度々薬物を併用していました。ただし、訓練すれば薬物の助けを借りる必要性は全くありませんし、わざわざ法律で規制されている犯罪行為に手を染める必要はありません。

単なる想像から派生して、光体はより実在的な身体へと発展していきます。クロウリーは光体を用いて、生命の樹の隅々まで踏破するよう指導しています。これこそがクロウリーの云う「光体の教育」です。では光体を用いた実際の作業の例をみてみましょう。トート・タローを扉として使用する星幽体投射です。

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・ヴァウの小径、Atu V The Hierophant

小五芒星儀礼による準備。続いて光体に入り、The Hierophantの扉を難なく越える。法衣を纏った若い女性が待っている。彼女は月の杯を両手で掲げている。彼女は淡い青の法衣を纏い、極めて無表情である。彼女は月の女司祭であり、この小径の案内役なのだと感じる。宇宙的な神殿へと続く長い階段が見える。そう我々は所在も知れぬ銀河の彼方の空間にいるのだ。それは霧の中にあり、私は彼女に従い階段を昇り始める。神殿そのものは未だよく見えないものの、周囲に団の参入者達の気配をありありと感じる。神殿に辿り着き、その長い回廊を静かに進むとやがて神官の大広間へと誘われた。ここで声を聴く。

"神官の広間へようこそ。こは真実のAEonの間にして、その形象はなし。四方の壁は無限なる宇宙なり、おお、それ故にそなたは我が宇宙的空虚の中にある。おお全ての永劫の秘密の部屋よ、AEonなど存在せず、しかし唯一のAEonがある"
周囲を見渡す。私は銀河の空間に佇み、無限の星々の広間にいる。私は壇上にいる巨大な神官を見る。彼は古き賢者にして参入者であり、宇宙的な赤の法衣を纏っている。月の女司祭が静かに語る。
"おお、この広間の戴冠せし絶対聖者よ、汝は神官と呼ばれる。彼はオシリスにして我はイシス、OI(オー・アイ)は偉大なる父と偉大なる母。彼の頭は外宇宙へと突き出ている。おお、この偉大なる父を見よ、しかし父は地下世界(アメンタ)へと潜み沈黙を護りたり"。

続いて緑の法衣を纏った司官が私の前に現れる。彼は語る。"汝はこの参入者の広間の秘密を学ぶべし。我が偉大なる父は神官にあらず。光の五芒星の中にある光の子こそが真の神官なり" 神官たる白き子供は月の杯に浸る。彼はホルスである。ホルスは彼の永劫たる炎と力を放射している。おお、戴冠し征服せし子供よ!絶対的復讐者よ!
月の女司祭が静かに語る
"オシリスは沈黙を保持し、彼は決して秘儀を語らず。おお、我が子供でさえも!こは沈黙の広間なり! アヴェ 我がケフラよ!"私は新たな神官たるホルスを凝視する。緑衣の司官が語る。 "黄金の子の分身こそが汝の聖守護天使なり、さなり、聖なる鷹の頭の主の分身こそが聖守護天使なり! 両性具有たるパンはその養育者、IO Pan! IO Pan!IO Pan! Iたるは彼の母イシス、Oたるは彼の父オシリス、パンこそは両者なり! Io Pan! そして子たるホルスよ! 深淵の赤子は誕生し、そは達人へと受肉する。聖守護天使は彼の分身であり、汝自身なり! そは見えざる汝なり!"
テトラグラマトン IHVH。ヨッドは父なるオシリス、最初のヘーは母なるイシス、ヴァウはホルスまたは分身として聖守護天使。では最後のヘーは?

緑衣の司官が語る。
"彼女はアッシャーにありて花嫁なり。こより彼女を求めよ、そして彼女のヘーと汝のヴァウを汝のマルクトの神殿において結びつけるがよい。彼女のヘーを吸収し、この宇宙の神殿を汝の光体によって吸収せよ!"私はそれを行う。輝ける赤子、そして彼の周囲に群がる鳩と蛇を見る。輝く霧が周囲一帯に立ち込め、最早何も見えない。私は全を吸収したのだ!

肉体へと帰還し、カバラ十字を行った。
(月の女司祭と緑衣の司官は、このAtuにおける占星術的影響を表している。何故ならば、このAtuは金星によって支配され、また月が興になるからである)


・シンの小径、Atu XX The AEon

小五芒星儀礼により魔法円を浄化する。光体を視覚化する間、神名エロヒムを振動させる。光体に入った後、AEonの扉をくぐる。外惑星の暗い空間に佇む自分を発見する。炎の円環があり、それは時計周りに回転を続けている。AEonは浄化の炎であり、霊でもある。またシンはイヘーシュアーの中心にある。

エロヒムとシンを振動させると、戴冠した達人が現出する。彼は戴冠した聖者ではあるものの別段老いてはいない。彼は黒いタウ型の法衣を身に纏い、胸に上昇する赤い三角形を着けている。彼はシンの文字を頂点に戴く火の杖を右手に握っている。私は炎の円環の中の玉座にいるラ・ホール・クイトと沈黙のサインを形成するホール・パー・クラァートを見た。赤とオレンジの光が周囲に脈動している。 黒衣の達人が語る。

"神々の春秋分点の火と力の輪を知るべし、そは無たる円環なり。無限の空間と星々、またはヌイトなり。至高の諸力は汝の最小部を含みたり。おお、有翼の蛇、もしくはハディート! AEonは神の時間なり。我が預言者がイヘーシュアたることを知るなかれ! おお汝、ケム(Khem)の兄弟達の暴かれし神秘よ"

ラ・ホール・クイトは立ち宣言する。しかしホール・パー・クラァートは沈黙を護っている。私にはラ・ホール・クイトの声は聴こえない。黒衣の達人、私の案内人こそがラ・ホール・クイトの召使である。彼は語る。
"おお、東にある汝のキブラー、おお我がラ・ホール! この宇宙に於けるもっとも活発な、しかし不動の力よ。おお青き汝の玉座、我は汝のコフ・ニアに敬礼せん! 陰と陽、我が完全なる力と我が完全なる沈黙。おお 太陽の唯一の象徴におけるこれらが双子の芸術。おお汝、久遠の炎! 我が社殿におけるヌーの輪とハディートの点により太陽の兆しが生まれん。おお それ故にヘル・ラ・ハは全ての神々から祝福されるのだ! アブラハダブラ!"

AEonの力があまりに強大な為、極度の疲労を感じる。今や赤とオレンジの光彩はあらゆる空間へと拡大し、神々の特異な振動を放射している。黒衣の達人が語る。"全の一なる卵の中の相反者よ、Solve et Coagula、そしてラ・ホール・クイトのの聖なる呪いによって世界を破砕せよ。おお、そして、それは沈黙によりて覆いをかけられるのだ。ヘル・ラ・ハの両翼によって。おおヘル・ラ・ハの二重の杖よ!"

肉体に帰還し、即座にカバラ十字を行った。

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 さて劇中にある魔術師は外界の喧騒から隔絶され、異界に飛翔することになります。彼は幻視も幻聴も知性では制御できないことを体験するのです。ここではタローのAtu(札)を用いた作業を参考として載せましたが、クロウリーが述べたようにあらゆる象徴、図形、サイン、絵画・・・それが既知のものであろうとなかろうと・・・扉として活用することが可能です。魔術師は魔法の円環から神々や霊をよび出すだけでなく、自ら諸界へと赴くこともできるのです。そして効果的な魔術の儀式では、それら一方のことが起こるのではなく、常に同時に起こるということが実践魔術の一つの鍵です(魔術師はよび込み、そして光体によって知覚するのです)。

クロウリーの魔術儀式『サメクの書』は全て光体を用いて実施されることは有名です。光体の発達こそは実践魔術の大きな鍵となります。ただし、それはそれ程難しいことではありません。とはいえ、人間の脳は、人間のこういった無謀な試みを必ず妨害します(ピート・キャロルはその機能をサイキック・センサーと呼んでいます)。その妨害を最小限にする為には、やはり継続的なアプローチが必要なようです。クロウリーはそれらの鍵を全て明確に(しかし難解に)書き記している達人の一人といえるでしょう。

Love is the law, live under will.